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『永遠の0』のロケ地として知られる「筑波海軍航空隊史跡」
茨城県笠間市「茨城県立こころの医療センター」の敷地内にある記念館で「筑波海軍航空隊」に関する貴重な史料などが展示されています。
2011年(平成23年)、県立友部病院が新病棟に移設された事に伴い「筑波海軍航空隊」を紹介する展示ルームが開設されました。
また、病院の管理棟として使用されていた「旧司令部庁舎」は老朽化のため解体が決定していましたが、2013年(平成25年)公開の映画『永遠の0』のロケ地となった事を機に「筑波海軍航空隊記念館」として期間限定公開されました。
その後、市民の働きかけにより公開期間は延長され、新展示棟のオープンに伴い2018年(平成30年)に笠間市の文化財に登録され恒久施設となりました。
「筑波海軍航空隊」とは
1934年(昭和9年)に戦闘機の教育部隊として「霞ヶ浦海軍航空隊友部分遣隊」が開設され、1938年(昭和13年)に「筑波海軍航空隊」に改称されました。
大日本帝国海軍では伝統的に山や川などの名前をつける習慣があり、旧友部町に所在するも飛行中の目印となる「筑波山」の名がつけられたとされます。
戦闘機パイロットになるための実機訓練を担っていましたが、絶対国防圏策定後の1944年(昭和19年)以降は本土防空部隊となり、戦争末期には特別攻撃隊(神風特攻隊)が編成され、特攻作戦の訓練も行われていました。
「筑波海軍航空隊」へ入隊した予備学生120人の内、特別攻撃隊(神風特攻隊)として戦地へ出撃したのは77名(戦死者60名)であったとされます。
メイン施設である「新展示館」
2018年(平成30年)にリニューアル公開された別館「新展示館」では、各種展示やミュージアムショップ・ラウンジ(休憩室)などを利用できます。
また、新展示室のオープンに伴い「旧市司令部庁舎」への立ち入りに制限がかかり許可制となりました。
「ゼロ戦操縦体験VR」がスゴイ!
VRゴーグルを装着して「ゼロ戦」の操縦を疑似体験できるVRシュミレーターや、記念館の歴史を紹介する映像、上空からのパノラマ映像の3つの映像を楽しめます。
VRシュミレーターでは、戦艦大和の主砲スレスレを飛ぶシーンなど予想以上の臨場感を体験できました。
ガイド役のイメージキャラクター「さくらちゃん」の声を担当するは、茨城県出身の声優「櫻川めぐ」さんです。
「バントリ!」や「ラブライブ!」などで活躍し、茨城県VTuberの「茨ひより」の中の人でもあります。
館内には、見応えのある「展示パネル」が並びます。
「筑波海軍航空隊」に関する当時の資料や各種展示パネルなどが紹介されています。
じっくり読み込んで行くとかなりの時間を要するので、バランスよく見て行くことをオススメします。
展示されている寄せ書きされた「日の丸」には、某国のネズミキャラクターの様な物が書き込まれています。
まあ、ご時世的に「のらくろ」だとは思いますが…。。
最初の「特攻志願者」を生み出した航空隊
最近の研究により、筑波海軍航空隊は「特攻」の始まりに深く関わっていた事が分かってきています。
1944年(昭和19年)、特攻を行うために設立された「第721航空隊」への移動志願者の選出がこの「筑波海軍航空隊」にて行われました。
その志願者の選出は強制的ではなく、あくまで志望者を募る形で行われ「桜花隊」の分隊長が選出されました。
「桜花」とは
大日本帝国海軍が開発した特攻兵器で、母機に吊るされて目標付近で分離し、パイロットが誘導して目標に体当たりを行うよう設計されました。
終戦までに755機が生産され55名が特攻で戦死したとされます。実用化された航空特攻兵器としては世界唯一の存在とも言われます。
オリジナルグッズが購入できる「ミュージアムショップ」
公式キャラクター「友部空くん」を使用したオリジナルグッズ、日本軍関連商品や近隣の土産品などを購入できます。
また、海軍繋がりで(?)「艦これ」グッズなども販売されていました。
「多目的ラウンジ」には本物のゼロ戦の尾翼が…
1階にあるラウンジには、ソロモン諸島より引き揚げられた「零戦」二一型の後部尾翼が展示されています。
その他、ビデオシアターや休憩スペースもありゆったりと過ごすことができます。
当記念館のシンボル「旧司令部庁舎」
1938年(昭和13年)に建造され、地上3階の鉄筋コンクリート造で、外観は船を模しており海軍を象徴しています。
戦後の司令部庁舎は、学校庁舎・県立友部病院管理棟として使用され、ほぼ当時のまま現存しています。
※見学の際は、新展示館の受付で簡単な申請対応を行ってください。
建物内もしっかりした作りで、まだまだ現役で十分使えそうです。
当時の名残が色濃く残る「司令室」
建物2階の中心に位置し、奥にある書庫などは海軍時代から使用されているものです。
この部屋が、最初の特攻志願者の選出が行われた場所であると考えると、何とも複雑な気分になりますね。
司令室内にあるタンスには「錨マーク」が彫ってあり、こちらも海軍時代からある物ですね。
司令室の横には「副司令室」があり、こちらは何とも簡素な作りです。
向かって左の壁にはドア付いていて「司令室」と繋げることが可能になっていました。
「永遠の0」のセットも見学できます。
筑波海軍航空隊の教官だった主人公「宮部久蔵」が、教え子を特攻に向かわせる苦悩が描かれた重要なシーンなどに登場しています。
その時代に縁ある本物の建物で撮影できる訳ですから、これ以上のリアリティーは無いですよね。
映画「永遠の0」とは
2013年(平成25年)、放送作家であり小説家の百田尚樹氏の零戦搭乗員の悲劇を描いたベストセラー「永遠の0」を、「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズで知られる「山崎貴監督」により映画化されました。
出演者には、岡田准一(主人公 宮部久蔵)・三浦春馬(宮部の孫 佐伯健太郎)・井上真央(宮部の妻 松乃)など実力派が起用され話題となりました。
主人公の宮部久蔵が、筑波海軍航空隊の教官だったという設定のもと「旧筑波海軍航空隊司令部庁」でロケが行われました。
『永遠の0』以外にも様々な映画やドラマの撮影に使用されており、作品の舞台として記念館に訪れる方も多いです。
展示室の一角には、ロケ地として使用された映画やドラマなどに出演した役者さん達のサイン色紙が並んでいます。
硫黄島付近で引き上げられた「航空機の部品」
旧司令部庁舎の1階には海の底から引き上げた航空機の残骸が展示されています。
その一つひとつには、人の生き死にが紐付いており何とも言えない迫力がありました。
記念館近隣にある「関連史跡」をご紹介します。
旧司令部庁舎の他にも記念館近隣には、滑走路跡・号令台・供養塔・海軍道路など当時の様子を感じることができる遺構が多数残っています。
供養塔
亡くなった隊員達の供養のために、当時の司令 古瀬貴季氏によって建てられました。
汽缶場煙突の跡
基地の奥には汽缶場(ボイラー室)があり、煙突部分の基礎が残っています。
水素瓦斯格納庫跡
供養塔の脇に水素ガスの貯蔵施設があり、現在はその基礎部分が残っています。
慰霊碑
1999年(平成11年)に慰霊のために建てられ、2017年(平成29年)に現在の場所に移動されました。
毎年5月には「慰霊祭」は開催されています。
隊門(正門)
開隊当初は裏門として使用され、1938年(昭和13年)筑波海軍航空隊として独立後はこちらが正門として使用されました。
門の向こう側の通りは「海軍通り」と呼ばれています。
当時のコンクリート塀
当時の基地を囲っていたコンクリートの塀が一部残っています。
しっかりした作りで、とても75年以上も前に作られた様には見えません。
号令台
学校で言う所の朝礼台ですね。多くの隊員達が号令台を中心に整列していた写真も残っています。
「鬼の筑波」といわれた所以か、号令台の内部に入って訓練を監視したりもしていたそうです。
かえり雲(彫刻作品)
元隊員で、世界的彫刻家「流 政之氏」が寄贈した彫刻が号令台の側に設置されています。
滑走路跡
当時の滑走路の形を残したまま、生活道路として使用されています。
なんの変哲も無い日常の風景に戦争の歴史が埋もれているんですね。
「すみれこども園」の向かい側には、平和の願いが込められた記念碑が設置されています。
地下司令部跡
爆撃で司令部庁舎が使えなくなった時のための地下要塞で当時のまま現存する貴重な史跡です。
現在は立ち入り禁止となっており、公開に向けて整備する為の「クラウドファンディング」などが行われています。
※現在非公開
「筑波海軍航空隊記念館」の基本情報
開館時間
●9:00~17:00(最終入場16:00)
休館日
●毎週火曜日、年末年始
入館料
●大人:500円(18歳以上)
●子供:300円(小学生以上)
各種割引
●大人:450円(18歳以上)
●子供:240円(小学生以上)
※JAF、SDカード、リログラフ、JR小さな旅、ベネフィット、エンスカイ特典、笠間の家 他
「筑波海軍航空隊記念館」へのアクセス方法
車を利用の場合
●北関東自動車道 友部I.C.より約7分
駐車場情報
●無料駐車場あり
電車を利用の場合
●JR常磐線・水戸線 友部駅よりタクシーで約6分
●JR常磐線・水戸線 友部駅より「茨城県立こころの医療センター」行きバスで約10分
【施設概要】
●施設名:筑波海軍航空隊記念館
●URL:https://p-ibaraki.com/
●所在地:笠間市旭町654(茨城県立こころの医療センター内)